学術情報
肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント
(策定:2023年11月25日、改訂:2025年4月10日)
日本肥満学会は、肥満症治療薬である持続性GLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名ウゴービ®皮下注)およびGLP-1/GIP両受容体作動薬チルゼパチド(商品名ゼップバウンド®皮下注)が肥満症に効能又は効果がある薬剤として2023年11月22日および2025年3月19日に薬価収載されたこととあわせて、「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」を策定・改訂し、ここに公開いたします。
女性の低体重/低栄養症候群
(Female Underweight/Undernutrition Syndrome)
(FUS)ステートメント(2025年4月17日公開)
日本の20代女性では2割前後が低体重(痩せ)(体格指数 (BMI) < 18.5kg/㎡)であり、先進国のなかでも特に高率である。低体重や低栄養は骨量の低下や月経周期異常をはじめとする女性の健康に関わるさまざまな障害と関連していることが知られている。我が国で低体重(痩せ)女性が多い背景として、ソーシャルネットワークサービス(SNS)やファッション誌などを通じた「痩せ=美」という価値観が深く浸透し、それに起因する強い痩身願望があると考えられる。近年では糖尿病や肥満症の治療薬であるGLP-1受容体作動薬の適応外使用が「安易な痩身法」として紹介され、社会問題となっている。
しかしながら、従来の医療制度や公衆衛生施策においては、肥満への対策が重視されており、低体重や低栄養に対する系統的アプローチは不十分であった。その原因として、第一に、低体重や低栄養と疾患の関係性を表すような疾患概念が存在しないことが挙げられる。また、この問題を解決するためには、個人の意識や行動に焦点を当てるだけではなく、痩身願望を生み出す社会構造へのアプローチが不可欠である。
このような背景から、日本肥満学会は、日本骨粗鬆症学会、日本産科婦人科学会、日本小児内分泌学会、日本女性医学学会、日本心理学会と協同してワーキンググループを立ち上げた。本ワーキンググループでは、骨量の低下や月経周期異常、体調不良を伴う低体重や低栄養の状態を、新たな症候群として位置付け、診断基準や予防指針の整備を目的とすると同時に、本課題の解決方法についても議論を進めている。本ステートメントでは、閉経前までの成人女性を中心とした低体重の増加の問題点を整理し、新たな疾患概念の名称・定義・スティグマ対策を示すとともに、その改善策を論じる。
肥満症診療ガイドライン2022のエッセンスをまとめた英文論文
(2023年12月20日公開)
肥満症診療ガイドライン2022のエッセンスをまとめた英文論文がEndocrine Journalで公開されました。肥満症診療ガイドライン2022の内容を引用の必要がある場合、本論文の引用をご検討ください。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj/advpub/0/advpub_EJ23-0593/_article/-char/ja
上記に関するAuthor correctionは以下URLで公開されています。
https://doi.org/10.1507/endocrj.EJ71-6_AuthorCorrection
肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント
(GLP-1 受容体作動薬発売に関して)
(策定:2024年2月22日)
肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント(策定:2023年11月25日)にて、提言した通り、本剤の発売にあたっては、肥満症治療薬として、適応となる疾患である肥満症に対する十分な理解のもと、安全・適正に使用されることが望まれる。特に、本剤は健康障害を伴わない(したがって肥満症とは診断されない)肥満に用いるべきではなく、また低体重や普通体重など適応外の体重者に対し美容・痩身・ダイエット等の目的で用いる薬剤ではない点には、十分留意すべきである。
この点において、ノボ ノルディスク社は、厚生労働省が策定した「肥満症の効能又は効果を有するセマグルチド(遺伝子組換え)製剤に係る最適使用推進ガイドライン」を満たす施設における本剤導入を発表し、さらに、日本における肥満症疾患の薬物治療のモデルケースの確立を念頭に、監督当局・医療従事者・医薬品卸売販売業者と協力していく所存を表明し、発表した。(週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬「ウゴービ®皮下注」〔一般名:セマグルチド(遺伝子組換え)〕発売のお知らせ)のリンク
本学会としても、適正使用推進を支援する手段として、同社の上記方針を了承するものである。
日本肥満学会・ノボ ノルディスク ファーマ研究助成金選考結果報告
2024年度第4回日本肥満学会・ノボ ノルディスク ファーマ研究助成選考結果報告
2023年度第3回日本肥満学会・ノボ ノルディスク ファーマ研究助成選考結果報告
2022年度第2回日本肥満学会・ノボ ノルディスク ファーマ研究助成選考結果報告
2021年度第1回日本肥満学会・ノボ ノルディスク ファーマ研究助成選考結果報告
2型糖尿病発症予防を目的としたデジタル技術によるヘルスケアサービスに関する指針
(公開:2025年2月28日)
日本糖尿病学会、日本肥満学会、日本医療情報学会が協力して、「2 型糖尿病の発症予防を目指すヘルスケアサービスの適正評価確立のための研究(研究開発代表 綿田裕孝)」を実施し、科学的なエビデンスに基づくヘルスケアサービスの社会実装を促進する基盤として指針を策定し、ここに公開いたします。
2型糖尿病発症予防を目的としたデジタル技術によるヘルスケアサービスに関する指針(本稿)
2型糖尿病発症予防を目的としたデジタル技術によるヘルスケアサービスに関する指針(サマリー版)
サマリー版は医療従事者ではなく健康経営企業、健康保険組合、自治体、一般生活者、患者などの方にも理解できるように平易な言葉でまとめています。指針の具体的な内容や指針の決定に関する詳細は、指針の本稿を参照してください。