Last update : 2024.07.10

日本医学会連合TEAM事業・日本肥満学会・
日本肥満症治療学会 合同企画シンポジウム
【第1部】肥満症に伴う各々の健康障害の発症・進展
とBMIの関係と減量による改善効果

発表者

ご氏名 門間 陽樹 先生
参画学会 一般社団法人 日本体力医学会
ご所属 東北大学大学院医学系研究科運動学分野
ご講演タイトル 肥満症対策に向けた運動・身体活動の効果と
その行動変容アプローチ
略歴 2011年3月に東北大学大学院医学系研究科博士後期課程修了(障害科学博士)。東北大学大学院医工学研究科、同大学院工学研究科、同大学院医学系研究科の助教などを経て、2018年4月から同大学院医学系研究科運動学分野講師を務め、2022年10月から准教授となり現在に至る。専門は運動疫学・健康科学。運動・スポーツ分野における疫学手法の普及・啓発に尽力。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では筋力トレーニングの基準策定の取りまとめを担当した。

ご発表内容の要約

日本体力医学会は、日本国内外における体力ならびにスポーツ医科学に関する研究の進歩、発展を促進し、研究の連絡協力を図るとともに、その成果の活用をはかり、我が国の学術の発展に寄与することを目的として活動しています。本発表では、肥満症対策に向けた運動・身体活動の効果とその行動変容アプローチについて、肥満研究における身体活動・運動の役割について概説し、本領域における最新の肥満研究について紹介しました。
まず、肥満研究においては、肥満者を対象に、体重や体格指数、内臓脂肪などをアウトカム、身体活動・運動を曝露要因あるいは介入要因とする研究がこれまで数多く報告されており、運動によって体重、BMI、内臓脂肪の減少効果などがシステマティックレビューにおいて確認されています(スライド1枚目)。さらに、疾病の発症や死亡リスクに対する肥満と身体活動・運動の組み合わせ効果を検討する研究も報告されています(スライド2枚目)。この研究では、UKバイオバンクの対象者7万人を対象に、心血管イベントリスクに対するウェアラブルデバイスによって評価された身体活動量と腹囲の組み合わせ効果を検討しており、身体活動レベルが低く、腹囲が高いとより心血管イベントの発生リスクは高いことが確認されている。一方、これらの肥満や疾病リスクに対する身体活動・運動の影響を背景に、肥満者における活動的な行動変容を促す方法論も盛んに検討されている。現在、肥満者において有効な行動変容テクニックとして確認されているものは、具体的な行動や目標を設定する方法や社会的インセンティブの付与、行動リハーサル法などが特定されており、総じて対面による行動変容テクニックのほうが効果は高いことが明らかにされている一方、効果の異質性は高く、一度に多くの行動変容テクニックを使用したからと言って必ずしも効果的ではないことが報告されている(スライド3枚目)。
このように、運動によって体重、BMI、内臓脂肪の減少効果は確認されており、肥満者において身体活動を増加させる行動変容テクニックも特定されているものの(スライド4枚目)、今後さらなる研究が必要であると考えられる。特に、身体活動や運動は生活習慣の一つにしか過ぎず、他の習慣との組み合わせ効果や置き換え効果、代償効果についての報告が期待される。

アンブレラレビュー|欧州肥満学会身体活動WGの報告
腹囲×身体活動の組み合わせ効果|心血管イベント
肥満者に有効な行動変容テクニック|全104個
本日のまとめ