Last update : 2024.07.10

日本医学会連合TEAM事業・日本肥満学会・
日本肥満症治療学会 合同企画シンポジウム
【第1部】肥満症に伴う各々の健康障害の発症・進展
とBMIの関係と減量による改善効果

発表者

ご氏名 小川 浩正 先生
参画学会 一般社団法人 日本呼吸器学会
ご所属 東北大学病院睡眠医療センター大学院医学系研究科産業医学分野
ご講演タイトル 睡眠時無呼吸患者に対する遠隔モニタリングを用いた減量支援
職位 東北大学環境・安全推進センター/大学院医学系研究科
産業医学分野 教授
東北大学病院 睡眠医療センター長/東北大学専属産業医
略歴
平成元年3月 東北大学医学部卒業
平成8年3月 東北大学大学院医学研究科博士課程修了
令和02年10月~ 東北大学病院 睡眠医療センター長
(病院特命教授)
令和04年4月~ 東北大学 環境・安全推進センター/
産業医学分野 教授

ご発表内容の要約

肥満がもたらす呼吸器領域における健康障害には、様々な疾患がありますが、その代表的な疾患が睡眠時無呼吸症候群です。睡眠時無呼吸症候群において減量は睡眠時無呼吸の改善効果が期待できる治療法です。睡眠無呼吸の治療の中心は持続陽圧呼吸(CPAP)療法で、睡眠時無呼吸患者の管理は、CPAP療法による睡眠時無呼吸の治療状況・使用状況を確認することで行われています。未受診月は遠隔モニタリングシステムを利用して確認し、必要時通信による指導が行われます。本日ご紹介するものは、地域医療基盤開発推進研究事業としておこなわれた「CPAP療法中の睡眠時無呼吸患者の肥満に対する遠隔モニタリングシステムを利用した減量指導の検証(Murase K, et al. Chest. 2022 Dec;162(6):1373-1383.)です。肥満を有する閉塞性睡眠時無呼吸患者に対して、遠隔モニタリングシステムを用いて CPAP療法のアドヒアランス に加えて体重・血圧・活動度をモニタリングし遠隔で生活指導を加えることが、患者の行動変容につながり肥満が改善するかを検証しています。多施設無作為化比較試験でおこなわれました。対象は、CPAP療法中の閉塞性睡眠時無呼吸患者で、毎月もしくは隔月で受診、そしてBMI≧25kg/m2の条件に合致する方です。通常治療群(N=84 BMI=31.8 ± 4.7)と遠隔減量指導群(N=84 BMI=31.6 ± 5.1)に無作為に分類し、3か月おきに受診していただき、受診しない月は遠隔モニタリングを用いてCPAPアドヒアランスを把握し、電話によるCPAP療法の遠隔指導をおこないます。対象者は、毎日、体重・血圧・活動量を測定し、結果をクラウドにアップロード。遠隔減量指導群のみ、体重・血圧・活動量測定結果に基づき、減量についても遠隔指導を行うこととし、2群での観察期間(6カ月)中において3%以上の減量を達成した患者数を主要評価項目としました。副次評価項目として、1. 観察期間中の体重減少量 2. 観察期間中の歩数 3. 外来および家庭血圧 4. 食習慣・運動量・睡眠に関する質問票スコア 5. 研究期間中の家庭での体重・血圧・歩数の記録回数 6. CPAPアドヒアランス 7. 血液検査結果 (HbA1c, T-cho, HDL-cho, LDL-cho, 肝酵素値) 8. 目標体重を達成できた日数の8項目。結果、3%以上の減量に成功した参加者は、通常遠隔モニタリング群では 21名(25%)であったのに対し遠隔減量指導群で33名(39.3%)と、遠隔減量指導群で有意に3%以上の減量を達成した患者数が高くなっていました(P=0.047)。また、3%以上の減量を達成した患者は、未達成患者に比べ、活動量(歩数)が有意に高かったことも明らかとなりました。以上から、肥満を有する閉塞性睡眠時無呼吸患者に対 して、遠隔モニタリングシステムを用いて 、体重・血圧・活動度をモニタリングし遠隔で生活指導をおこなうことで、患者 の行動変容につながり肥満が改善することが明らかとなりました。

以上