Last update : 2024.07.10

日本医学会連合TEAM事業・日本肥満学会・
日本肥満症治療学会 合同企画シンポジウム
【第1部】肥満症に伴う各々の健康障害の発症・進展
とBMIの関係と減量による改善効果

発表者

ご氏名 和田 淳 先生
参画学会 一般社団法人 日本腎臓学会
ご所属 岡山大学腎・免疫・内分泌代謝内科学
ご講演タイトル 肥満関連腎臓病の病態と対策
略歴
1988年8月 倉敷中央病院内科研修医
1992年4月 岡山大学医学部附属病院第三内科医員
1992年10月 ノースウェスタン大学医学部病理学
Research Associate
1996年12月 国立療養所邑久光明園内科医長
1997年4月 岡山大学医学部第三内科助手
2001年4月 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科助手
2005年5月 岡山大学病院講師
2006年8月
-2008年7月
文部科学省研究振興局学術調査官(兼任)
2010年1月1日 岡山大学 腎・免疫・内分泌代謝内科学 
准教授
2015年8月1日 岡山大学 腎・免疫・内分泌代謝内科学 
教授
2023年4月1日 岡山大学病院副病院長(研究担当)

ご発表内容の要約

肥満は腎臓病進行の危険因子であり、高血圧腎硬化症・糖尿病関連腎臓病・慢性糸球体腎炎・腎移植・片腎摘出後・急性腎障害・低形成腎など多くの腎臓病で指摘されている。末期腎不全の補正ハザードリスクは高い順番に、タンパク尿(定性)、BMI (body mass index)、血清クレアチニン値収縮期血圧、年齢、糖尿病が指摘されている。肥満関連腎臓病(obesity-related glomerulopathy: ORG)は、肥満においてネフローゼ症候群と同等のタンパク尿を引き起こす病態であり、肥満(BMI30kg/m2)以上、浮腫を認めないタンパク尿、正常血清アルブミン値を三徴とし、糖尿病性腎症や高血圧性腎硬化症を除外する。肥満関連腎臓病の組織像は、糸球体肥大、巣状分節性糸球体硬化を特徴としている。一般的に一次性巣状分節性糸球体硬化症と比べ、二次性巣状分節性糸球体硬化症である肥満関連腎臓病のほうが予後は良好であるとされるが、腎不全に至る症例もある。一方岡山大学病院の2010年から2017年510例の腎生検症例では、1度肥満では7.5%、2度肥満では20.8%、3度肥満以上に限ると50%が肥満関連腎臓病と診断された。わが国の肥満の定義はBMI25kg/m2以上であるが、肥満症の診断基準に必須な健康障害のひとつである肥満関連腎臓病が日本人ではBMI25kg/m2以上で合併していることが示された。肥満関連腎臓病に対しては減量がもっとも重要な治療であるが、減量代謝改善手術、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬などの肥満関連腎臓病に対する有効性のエビデンスが待たれる。

以上