Last update : 2024.07.10

日本医学会連合TEAM事業・日本肥満学会・
日本肥満症治療学会 合同企画シンポジウム
【第1部】肥満症に伴う各々の健康障害の発症・進展
とBMIの関係と減量による改善効果

発表者

ご氏名 遠藤裕一 先生
参画学会 一般社団法人 日本外科学会
ご所属 大分大学消化器・小児外科学講座
ご講演タイトル わが国における減量・代謝改善手術の現状と治療成績
略歴
平成11年3月 宮崎医科大学医学部医学科卒業
(職歴)
平成11年4月 大分医科大学医学部附属病院(第一外科)研修医
平成12年4月 大分県立病院外科 研修医
平成13年4月 大分赤十字病院外科 医師
平成14年4月 国立大分病院外科  医師
平成15年4月 大分赤十字病院外科 医師
平成21年4月 別府医療センター外科 医師
平成23年4月 渡町台外科病院 医師
平成25年1月 天心堂へつぎ病院 外科部長
平成27年1月 大分大学医学部消化器・小児外科 助教
令和2年4月 大分大学医学部消化器・小児外科 講師
令和6年5月 大分大学医学部消化器・小児外科 准教授
現在に至る。
(大学院)
平成17年4月 大分医科大学大学院医学研究科
平成21年3月 同上 修了

ご発表内容の要約

【はじめに】わが国における減量・代謝改善手術は1982年、開腹手術として開始された。その後、さまざまな術式の変遷を経て、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(LSG)が2014年に保険収載された。LSGは簡便に施行可能で安全性と有効性を兼ね備えていることから、現在わが国の主流の術式となっている。また重度の糖尿病(インスリン使用)患者さんに対しては、バイパス系手術の方が効果的であることが、わが国のデータからも示されており、腹腔鏡下スリーブバイパス術が2018年、先進医療として認定されている。わが国における減量・代謝改善手術の現状と治療成績、今後の課題について報告する。

【わが国で行われている減量・代謝改善手術の種類】

  • ① 腹腔鏡下調節性胃バンディング術:簡便な術式であるが、調整が大変であり、あまり普及しなかった。
  • ② LSG:現在最も行われている術式。簡便で効果が高いが、超肥満や重度の糖尿病に対する効果は限定的。
  • ③ ルーワイ胃バイパス術:欧米を中心に行われているが、残胃の観察が困難であるため、日本人には不向きとされている(胃癌が多いため)。
  • ④ スリーブバイパス術:LSGにバイパスを付加したもの。効果が高く、先進医療Aとして実施可能。2024年6月より保険収載される。
図:現在行われている減量・代謝改善手術

【わが国における実施件数】

2014年の保険収載以降、症例は増加している。一方で、海外と比べるとその数はかなり少なく、認知度不足は否めない。また海外と比較しても縫合不全や出血なども遜色なく、安全に施行できていると考えられる。

図:わが国における術式別施工症状の推移

【治療成績】
LSG、スリーブバイパス術における術後5年での総体重減少率(%TWL)は26%、32%であった。また、それぞれの術式における糖尿病、高血圧の寛解率(CR+PR)はLSGにおいて85%、66%であり、スリーブバイパス術では71%、46%という結果であった。

【減量・代謝改善手術の問題点とこれから】

  • ① 現在(2023年12月の時点)、保険収載されている術式はLSGのみであり、BMI50以上の超肥満や重度の糖尿病を有する患者さんに対しては効果が劣る。
  • ② 肥満患者さんにたいする偏見(obesity stigma)がいまだ存在し、正しい知識と啓蒙活動がこれからも重要である。