日本産科婦人科学会には大きく4つのサブスペシャリティがあり、本学会でも、肥満はどの領域においても関心事である。例えば、周産期医学では、妊娠前のBMI 25を超えると妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病の、婦人科腫瘍学では子宮体癌、生殖内分泌学では多嚢胞性卵巣症候群、女性医学(女性ヘルスケア)では月経異常、メタボリック症候群のリスクが増加することがわかっている。
本シンポジウムでは、産婦人科領域においてサブスペシャリティ横断的で、かつガイドライン作成も進んでいる妊娠糖尿病既往女性、また多嚢胞性卵巣症候群における肥満の影響と管理の重要性について主に説明した。
妊娠糖尿病既往は将来的に2型糖尿病の発症リスクが高いことが従来わかっており、これに対して生活習慣介入による体重の有意低下(1.00kg減少,95%C.I. -1.32, -0.68)、また2型糖尿病の発症率の有意低下(OR 0.70, 95% C.I. 0.52, 0.95)をメタ解析で確認しフォローアップのアルゴリズムを提案している(図)1)。CQについての解説等は、文献を参照していただきたい。
多嚢胞性卵巣症候群においては、本邦で作成中のガイドライン2)から月経異常、妊孕性、周産期合併症、子宮体癌に対して減量・代謝改善手術がどの様な効果をもたらすのかを紹介した。
妊娠糖尿病も多嚢胞性卵巣症候群も若い女性の疾患と認識されるが、その病態に密接な関連を有する肥満については長期的な視点から見てゆくことが重要である。
引用文献
1)杉山 隆,平松 祐司. 妊娠糖尿病既往女性のフォラーアップに関するガイドライン.
https://dm-net.co.jp/jsdp/research/gdmguidelines.pdf (20240609 閲覧)
2)杉山 隆. 月経異常、不妊,減量・代謝改善手術のための
包括的な肥満症治療ガイドライン. 日本肥満症治療学会編(2024年7月発行予定)
図 妊娠糖尿病既往女性の診療アルゴリズム