Last update : 2024.07.10

日本医学会連合TEAM事業・日本肥満学会・
日本肥満症治療学会 合同企画シンポジウム
【第1部】肥満症に伴う各々の健康障害の発症・進展
とBMIの関係と減量による改善効果

発表者

ご氏名 田村 嘉章 先生
参画学会 一般社団法人 日本老年医学会
ご所属 東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科
ご講演タイトル 高齢者の肥満・肥満症の特徴と課題
略歴
1996年 東京大学医学部卒業
1998年 東京大学医学部糖尿病・代謝内科
2002年 東京大学大学院医学系研究科修了、医学博士
2004年 東京都老人医療センター
(現東京都健康長寿医療センター)内分泌科
2009年 ハーバード大学マサチューセッツ総合病院麻酔・
集中医療・疼痛医学教室研究員
2011年 東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・
内分泌内科
2012年 東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・
内分泌内科医長
2018年 東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・
内分泌内科専門部長
2023年 東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・
内分泌内科部長

ご発表内容の要約

高齢者のBMIと死亡、フレイルの関連はU字曲線を描き、高度肥満でも低体重でもそのリスクが高まる。
高齢者肥満の特徴として、腹部肥満やサルコペニア肥満が増加することがあげられる。ウエスト周囲長高値は認知症や心筋梗塞の発症と関連するという報告がある(図1)。またサルコペニア肥満も認知機能の低下や要介護認定のリスクとなる(図2)。
肥満高齢者の減量においては、エネルギー制限だけではなく、運動を併用することが重要である。また骨格筋量の減少を防ぐため、十分なタンパク質を補充する必要がある。最近、高齢糖尿病患者においてもSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬投与による心血管や腎イベントの予防効果が確認されているが、過度の体重減少には注意が必要である。
肥満症高齢者への外科手術の適応については、本邦では原則として65歳までであるが、ASMBSとIFSOのガイドラインでは、年齢の上限を定める根拠はなく、フレイル評価を含む慎重な症例選定が必要とされている。実際、手術の合併症リスクには、年齢より併存疾患が関与するというデータがある。今後本邦でも、フレイルや併存疾患の評価に基づく適応が明らかになることが期待される。

図1:高齢者ウェスト周囲長と認知症,心筋梗塞発症リスク
図2:高齢者のサルコペニア肥満と新規介護認定のリスク

以上