Last update : 2024.07.10

日本医学会連合TEAM事業・日本肥満学会・
日本肥満症治療学会 合同企画シンポジウム
【第1部】肥満症に伴う各々の健康障害の発症・進展
とBMIの関係と減量による改善効果

発表者

ご氏名 藏城 雅文 先生
参画学会 一般社団法人 日本痛風・尿酸核酸学会
ご所属 大阪公立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学
ご講演タイトル 肥満症と高尿酸血症
略歴
2003年5月 大阪市立大学医学部附属病院
2010年10月 兵庫医科大学 内科学 内分泌・代謝科 助教
2011年4月 兵庫医科大学 内科学 内分泌・代謝科 学内講師
2012年2月 兵庫医科大学 内科学 内分泌・代謝科 講師
2016年4月 大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学 講師
2022年4月 大阪公立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学 講師
2020年度 日本痛風・尿酸核酸学会 優秀論文賞受賞
2022年度 日本痛風・尿酸核酸学会 学会賞受賞
2023年度 日本痛風・尿酸核酸学会 若手研究者賞受賞
所属学会等 日本痛風・尿酸核酸学会:評議員、若手委員、編集委員、認定痛風医資格制度委員、高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第4版改訂委員

ご発表内容の要約

高尿酸血症は性別、年齢を問わず、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えるものと定義される。高尿酸血症は成因に基づき以下の3つのタイプに分類される。①「腎負荷型」:尿酸の腎外排泄低下+尿酸の産生が増加するタイプ。②「尿酸排泄低下型」:尿酸の排泄が低下するタイプ。③「混合型」:「腎負荷型」と「尿酸排泄低下型」の両者を合併するタイプである。高尿酸血症の中で尿酸排泄低下型が約60%、混合型が約30%、腎負荷型が約10%を占めている。
高尿酸血症の頻度は全人口の男性で約20%、女性で約5%と報告されており、1996-2004年に行われた職域集団を対象とした研究では、男性において20~60歳台のすべての年齢層で高尿酸血症は増加傾向を示していた(痛風と核酸代謝. 2006)。成人男性を対象とした調査では、内臓脂肪面積は血清尿酸値と正の相関関係を示しただけでなく、尿酸クリアランスとは負の相関関係、尿中尿酸/クレアチニン比率とは正の相関関係を示した(Metabolism. 1997)。このことは、内臓脂肪蓄積が尿酸の排泄低下および産生過剰両者に寄与することを示している。これまでの一連の研究により、内臓脂肪蓄積と尿酸排泄低下に関する病態が明らかになってきた。内臓脂肪蓄積により惹起された高インスリン血症(インスリン抵抗性)は、近位尿細管からSMCT1 (Sodium-coupled monocarboxylate transporter 1)によりナトリウムと乳酸などのモノカルボン酸の再吸収を促進する。再吸収された陰イオンはURAT1(urate transporter 1)により分泌されるが、それに伴って尿酸の再吸収が促進されるため、結果として尿酸排泄の低下がおこることが明らかとなった(図1)。
高尿酸血症の是正においては、生活指導(アルコールの摂取制限を含めた食事指導)が最も重要である(高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版)。2008年に開始された特定検診・保健指導のデータを基盤とした重要な報告がなされている。肥満症の診断基準を満たす3480人を対象として、1年後の体重変化と尿酸値変化との関連を調査したところ、3~5%の減量で尿酸値が有意に低下していることが明らかとなった(Obes Res Clin Pract. 2014)。そのため、肥満症診療ガイドライン2022 では、「3%以上の減量で有意な尿酸値の低下が期待できる」と記載されており、過体重の解消が重要なポイントとなる。しかしながら、高度肥満症は内科療法による減量とその維持が極めて難しい疾患であり、肥満外科療法が治療選択肢として国内外で推奨されている。肥満外科療法による血清尿酸値への影響を検討したメタ解析では、外科治療3か月以降から3年間にわたり尿酸値の有意な低下効果が認められている(Obes Rev. 2019)。
高尿酸血症および肥満症に対して、食事療法、運動療法、認知行動療法、薬物療法を含む内科療法および外科療法が必要であり、日本痛風・尿酸核酸学会は日本肥満学会と領域を横断して連携し、高尿酸血症および肥満症に対する取り組みを実施してまいります。

図:内臓脂肪蓄積(高インスリン血症)と尿酸再吸収

以上